4月から本学建築科に就任いたしました。5月には科内で就任記念レクチャーを企画していただき「Art vs Architecture, Architecture with Art.」というテーマで、私の建築家としての背景と活動を紹介しました。
これまで、大学などの招聘で講演するときは「建築とは何か?建築家とは何者か?」というテーマで、平たく言えば「作家としてどのように生きてきたか?」という話をしてきました。私の場合、コマーシャルな仕事からはできるだけ距離を置き、仕事の依頼を待つだけではなく、より先駆的な作品を発表するための機会を探すようになりました。結果、ボランティアや手弁当でも様々な地域に出かけ、コミュニティ活性の場面となる拠点づくりを提案するスタイルを続けています。
就任記念レクチャー(2024年5月24日)の様子
そうした実務を通じ、「生活環境を良くできることすべてがデザインだ」と思うようになり、地域の課題解決に応える建築、さらには建築の以前やその後のプロセスにも関わる機会が多くなっています。建築のテーマは地域の課題に呼応し幅広く、高齢者や障害者の生活環境の改善、空き家の適正管理と活用、過疎地域の移住促進とコミュニティづくり、地域固有景観の継承、子どもの遊びや教育、社会包摂、動物福祉、人間と自然の新しい関係などなど、多岐にわたります。
今回、そんな私の建築活動を「芸術との関わり」という、いつもとは違う視点で見直してみたところ、建築を志す以前の、10代のころの芸術への憧れや、建築を学び始めてからの芸術への嫉妬、そして、建築家として彫刻?絵画?音楽?映画?ファッション?現代美術?アートプロジェクトなど様々な芸術領域や芸術家たちに触発され、協働しながら「建築」を考えてきたことを思い返す良い機会となりました。本学に着任してからというもの、私にとっての建築は、いつも芸術と共にあったのだと再発見しています。
奇しくも入学式の学長挨拶において、本学が「芸術が社会に貢献できることを研究して実践していく」取り組みとして「芸術未来研究場」を立ち上げたことを知り、さらに谷中地域の交流拠点「藝大部屋」の整備には、安部研究室としてお手伝いする